2025年6月11日

BIMの活用によって建築・建設業界のDXが進む中、2026年春からBIMデータを活用したBIM確認申請が本格化します。本記事ではBIM確認申請の第一ステップとなる「BIM図面審査」について、具体的な内容や、準備すべきことについて解説します。
1. 2026年開始のBIM確認申請とは?
国がBIM確認申請を推進する背景には、少子高齢化による生産年齢人口の減少、柔軟な働き方やサステナビリティへの取り組みなど、建築・建設業界における様々な社会課題があります。
こうした課題解決の1つがBIMの活用であり、「BIM確認申請による効率化」では、4つの具体的な取り組みが進められています。
- 確認申請のオンライン化の推進
- 確認申請用のCDE(Common Data Environment:共通データ環境)の構築
- 確認申請に必要な情報やルールの標準化
- 申請者側と審査者側の双方のマニュアル整備
一方、こうした取り組みは設計者側にとっても次の3つのメリットがあります。
1つ目が整合性の高い申請図書を作成できることです。BIMソフトウェアの基本機能が3Dモデルであるため、平面図・立面図・断面図間の齟齬がない整合性の高い図面を生成できます。
2つ目が業務効率化です。担当者は窓口に出向かずとも、Webから申請や指摘事項への対応ができるようになり、移動時間やコストを削減できます。
3つ目が審査期間の短縮です。整合性が担保された高精度な図面は、担当者による細部までのチェックが不要となります。
2. BIM図面審査とBIMデータ審査の違いとは
ここでは、BIM図面審査とBIMデータ審査の違いについて整理します。

BIM確認申請の流れ。BIMの導入により、大幅に確認期間が削減できる
まず、確認申請とは、建築物を建てる前に建築基準法などの関連法規に適合しているかを確認してもらう法的手続きです。
確認申請の中で、BIMソフトウェアで作成された各申請図書を用いて適合審査を行うことがBIM図面審査です。
BIM図面審査のプロセスは次のとおりです。申請者は入出力基準に基づきBIMソフトで作成したPDF申請図書、設計者チェックリストおよびBIMモデル(IFC形式:CADデータモデルのファイル形式)を、確認申請用クラウド(CDE)システムを通じて提出します。一方、審査者は設計者チェックリストに基づく項目について、BIMデータの整合性を活用して審査を進めます。
BIM図面申請のメリットは、BIMソフトを使用することで、整合性の高い申請図書を作成できること、さらに各図面(配置図、平面図、立面図、断面図など)の情報をデジタルで照合することで、不整合の有無や法令基準を満たしているかの審査を、高精度かつ効率的に行い、審査期間の短縮を図れることです。
次に、BIMデータ審査ですが、これは建物や建築物の3Dモデルと、そこに紐づく情報を用いる審査です。この審査は3次元空間内で実際の建物の姿を確認しながら、関連情報と合わせて審査を進めることが可能です。そのため、図面間の不整合がそもそも発生しにくく、設備の干渉チェックや法的な不適合を可視化しやすいといった特長があります。
3. BIM図面審査のチェック項目と手順

BIM図面審査は、国土交通省の建築BIM推進会議(※1)が定めたガイドライン(※2)に基づいて行われます。設計者側は、BIM図面審査の基本となるチェックリストや確認申請図書表現標準に沿って準備を進める必要があります。「確認申請図書表現標準」には、今までバラバラだった防火設備や区画などの図面表現を統一するための標準的な表現指針が示されています。
なお、BIM図面審査に必要なものは次のとおりです。
- BIMソフトウェアで作成したPDF図面
- IFCデータ
- 設計者チェックリスト(BIMで作成した図面を明示)
Archicadを使用する場合は、図面作成前のテンプレート設定が有効です。プレゼンテーションソフトなどと同様に、Archicadにも専用のテンプレート機能があるため、確認申請図書表現標準を事前に組み込むことで、統一された表現によるスムーズな作業とBIM図面審査を進められます。
さらに、新たに開発された「敷地マネージャー」では、BIM確認申請に特化した敷地図の作成や面積計算などを効率的に行えます。
(※1)参考:国土交通省「建築BIM推進会議」
(※2)参考:国土交通省「建築確認におけるBIM 図面審査ガイドライン(案)」
4. BIM図面審査に向けて準備すべきこと
BIM図面審査は、企業規模や設計規模に関わらず、導入できます。一方、現時点では規模に依らずBIM図面審査は必須ではありませんが、2026年春からBIM活用の普及が促進される見込みです。また、将来的には建築基準法施行規則、指針告示も想定されているため、今後は申請できるようになることがポイントです。
BIMを導入済みの企業では、使用しているBIMソフトウェアが、BIM図面審査の入出力基準を満たしているか、を確認しましょう。各ソフトウェアで提供されている「サンプルモデル」を確認することで、どのようなデータ構成で図面が作成されるのか、を把握できます。
一方、新たにBIMを導入する企業では、BIM自体の導入の検討と導入の決定が第一歩です。例えば、Archicadであれば、サブスクリプションで初期費用を抑えて導入できます。また「BIM Classes」といったArchicadを学ぶオンラインスクールをあわせて利用することで、最短でBIMの習得を図り、2026年から始まるBIM図面審査に向けて準備を進められます。
5. BIM図面審査のサンプルモデルを公開中

グラフィソフトでは、Archicadを利用したBIM図面審査の準備を進める上で、スムーズにBIM図面審査に移行するためのサンプルを提供しています。
まずは、「Archicad確認申請サンプルモデル」(※3)です。これは、BIM図面審査とは若干異なるものの、申請図書や設計図が含まれているため、必要となるモデルをチェックするのに参考となります。
次に、「BLCJ/Archicadサンプルモデル」(※4)です。これは、BIM図面審査向けのArchicadサンプルモデルであり、BIM図面審査の参考として利用できます。
最後に、「建築設計三会、Archicad意匠参考テンプレート」(※5)です。これは、BIM図面審査に特化して作られているため、実務での活用価値が高いサンプルモデルです。
(※3)参考:Archicad確認申請サンプルプロジェクト
(※4)参考:BLCJ/Archicadサンプルモデル「BIM図面審査サンプルモデルの配付について」
(※5)参考:意匠参考テンプレート(Archicad、Revit)の配布について – 建築設計三会
6. Archicadなら、“設計者リストのすべての項目”に対応
BIMデータの活用が本格化する中、国土交通省では、2027年度にはBIM図面申請・審査の全国展開を、2029年度からはBIMデータ審査の開始を予定しており、建築業界全体の高度化・効率化が進化します。Archicadは、国土交通省が求めるBIM図面審査の“設計者チェックリスト”のすべての項目を満たしています。Graphisoftでは、BIMの活用による建築確認申請のDXを一貫してサポートします。

Archicad – 建築家による建築家のためのBIM。
Archicadを使用すると、これまでよりも更にスマートに、建築家本来の設計するという仕事に、フォーカスできるでしょう。
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Archicadが、優れた建築を創造するお手伝いをさせていただきます。
建築申請確認を効率化する、BIMデータで出力された申請図書を活用した新しい建築確認申請(図面審査)が本格的に開始されます
Archicadは国土交通省が求めている
BIM図面審査 “設計者チェックリスト” のすべての項目を満たしています!


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