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小川工業株式会社

小川工業株式会社

BIM活用が現場を変える精度向上とコスト削減を実現 こうした取り組みの成果もあり、社内のBIM活用は徐々に広がりを見せている。全社員約200人のうち、建築部、土木部、住宅部を含む約50人に対してArchicadの操作研修を実施。操作を体験した社員の中には、自らの現場でBIMを取り入れるケースも出始めている。平塚室長は「少しでも触れてみれば、その便利さが実感できる。現場で使おうという流れも自然に生まれてきている」と語る。 同社では、BIMの導入によって建築業務の進め方が大きく変わりつつあるという。たとえば、3Dモデルに情報を集約することで、パースを何枚でも切り出すことが可能となり、2D図面とパースを別々に作成する手間が不要となった。これにより、作業時間の短縮とコスト削減につながっている。 また、一箇所の修正がすべての関連図面に自動的に反映されるため、図面の整合性が高まり、修正漏れや手戻りといった非効率の防止にも効果を発揮。品質の安定やスムーズな現場対応にも寄与しているとみられる。 プレゼン資料の作成にもBIMモデルが活用されるようになり、提案内容を視覚的に伝える力が高まった。社内では、提案力の向上にもつながっているとの声もあり、BIMによる情報の可視化が営業活動を支援するツールとしても機能し始めている。 同社では、こうした取り組みを通じて、クライアントに対してより付加価値の高い建築を提供できる体制の構築を進めている。その環境は着実に整いつつあり、同社の競争力を支える重要な基盤となることが期待される。 さらに、グラフィソフトが提供する3Dモデルビューアーアプリ「BIMx」を活用することで、スマートフォンやタブレット上で誰でもArchicadの3Dモデルを閲覧できる。2D図面に比べて完成イメージが伝わりやすく、断面表示や視点の切り替えも自在なため、設計意図の共有や合意形成の円滑化にもつながっている。 グラフィソフトジャパンのマーケティングマネージャー・保土田氏は「BIM活用においては、専任担当者や専門部署を設けることが浸透の鍵となります。小川工業様も、そうした体制を整えられたことが、取り組みの着実な進展につながっているのではないでしょうか」と語る。「BIM導入により図面の整合性が高まり、手戻りなどの無駄なコストも削減できます。Archicadは業務の効率化、省人化、フロントローディングを実現し、建設業界が直面する課題解決に貢献する」とメリットをあげた。 小川社長は、「技術者・職人の不足が深刻化する中、省人化・省力化の実現こそが建設業経営の成否を左右する。BIMをはじめとした生産性向上技術の活用なしには、今後を乗り切ることはできない」と語る。 そして、「これからの建設業にとって、BIMは選択肢ではなく、前提となる技術だ」と、業界の未来を見据えた力強いメッセージを投げかけた。 東亜酒造 羽生蒸溜所ビジターセンター(2025年5月オープン) 計画過程におけるBIMの活用

髙松建設株式会社 × グラフィソフトジャパン座談会

髙松建設株式会社 × グラフィソフトジャパン座談会

髙松建設のBIM推進の取り組み 徐(髙松建設) 髙松建設でArchicadを使い始めたのは、Ver.6.5の頃。試験的に企画設計のプラン図面作成ツールとして購入したのがはじまりで、パースを作成するチームのモデリングソフトとして定着しました。その後、2019年にBIM推進のためのチームを立ち上げ、様々なソフトを見比べてArchicadがベストとなり、全社的に設計から施工まで全フェーズにArchicadを活用していくという方針を決めました。 松崎(髙松建設) Archicadに決定した理由は操作のしやすさと施主に図面を出す際、プレゼンテーションするためのツールが揃っていたことが決め手だったと聞いています。BIM推進室が発足し、「企画設計をBIMで容易に行うことはできないか」、「工事の仮設検討に3Dモデルが使えないか」、「設計から施工までの一連の流れの中でBIMデータを活用すること」という3つの柱からスタートしました。それから試行錯誤をしながら2021年ぐらいから実際に業務として本格的に使用しています。 徐(髙松建設) 操作性とレイヤー機能が良いですね。レイヤー機能はあまりBIMソフトウエアでは実装されていないので重宝します。2次元CADに近い感覚でレイヤー操作ができますので、様々な調整がやりやすいです。また、モデリングの自由度がとても高く、複雑な形状をモデリングする際、幾通りものやり方が選択できるので、その中で1番適した方法を選んで短時間で正確にモデリングできるのは良いと思います。 BIMをはじめてみて 大西(髙松建設) 建築の実務経験がない状態からBIMに携わったのですが、通常であればもう2Dの図面を読み込んで、建物の形状や重機の配置を想像しながら自分の頭の中で組み立てていくことが普通ですが、Archicadで作図することで3D となって建築や工事の内容がわかりやすく視覚化されるのでそれによって建築の知識が自然とつきました。現場でも皆と非常に共有しやすい。最近は、社内で作成したBIMのデータを現場にも展開していこうということで、BIMの研修も始めてるのですが、そういった際にも伝えやすいツールだと思います。また、モデリングをする際にも直感的に検討できるところが魅力だと思います。 飯田(グラフィソフトジャパン) 私も設計出身なんですけど昔スケッチでディテールを描いてもらったのを見て、描かれた部分はわかるけど建物全体が掴みづらかったことがありました。確かにBIMモデルがあると全体が分かりやすいと思います。 松本(髙松建設) 私は20年以上前から2Dで作図をしていて本格的なBIMは初めてだったのですが、あまり抵抗もなくすんなり業務が移行できました。今では2Dで書くより、3Dで作った方が早いと思います。  また、専用のオブジェクトツールを配置することで、例えば敷地に対してどの重機を使うとなった時にこのトン数だとこの大きさというようにサイズ感がすぐに分かるというのが良いと思います。 高井(髙松建設) BIMのデータを持って現場に打ち合わせに行く時があるのですが、大きいモニターに映して皆で同じものを見て、間違いがないかを分かりやすくチェックできることが便利だと感じます。 長田(髙松建設) テンプレートなどを利用して自分が検証したり作ったりするモデルと同じものを他の人とも共有して使用できることが便利だと思っています。柱ツールや壁ツールに情報を入れたものをお気に入り登録しておけば皆がそれを活用できるのは良いですね。 徐(髙松建設) モデリングだけではなく、BIMはいかに数量などのデータをうまく連携できるかが大切だと思います。それを考えるとArchicadはBIMを使う上で優秀なソフトだと思います。Archicadは単体でも集計やチェック機能などが実装されていているのですが、それだけではなくsmartCON Plannerなどの仮設用のアドオンソフトや他のソフトとの連携もよく、スムーズにBIM連携が行えます。 企画設計から施工まで ー 髙松建設のBIM 松崎(髙松建設) BIMを運用している部署は設計部と工事部、同じフロアーでBIMチームとして協働しています。仮設検討、施工図、生産支援、連携、開発と5つのチームが設計から施工までカバーしています。当社は、設計施工率が90%以上ですので、案件のお話を頂いた段階から実際にその敷地で施工できるかどうかの検討も即時BIMで行います。企画設計に関しては、GDLとAPIでプログラムを組んでモデル・図面の作成を行い、概算に連携するための面積表を含む、各所数量関係も算出できるシステムを組んで行っています。受注決定後は、構造の仮定断面モデルを作成し、敷地モデルと仮定断面モデルをいれて、山留検討や土量算出をします。実際にその敷地で施工する工法の検討も行います。実施設計図の図面が上がってきましたら、その図面を元にBIMモデルを再構築して積算・仮設検討に連携します。設計が固まってきたら、それを施工図に反映させて現場に渡すという流れで設計から施工まで行っております。現在大阪本店で年間60以上の物件をBIMで行っています。 よりスムーズな施工BIMを実現 ー BIMを活用できた事例とは? 松崎(髙松建設) BIMがなければできなかった事例というと設計段階よりも圧倒的に施工段階の時に多いと思われます。複雑な形状の建物を建設する際には3Dモデルがあるからこそ精度の高い施工検討ができる事例が多数あり、どう作っていくのか、どのような手順で行っていくのか等の検討を画面上でシミュレーションできることは効率化に繋がっています。あと鉄骨建方もいくつものパターンから比較検討ができるようになったのは非常に助かっています。 飯田(グラフィソフトジャパン) モデルが作りづらいところは実際の現場でも問題が起きやすいことが多いと思うのですが、フロントローディングではないですけど早めのチェックや確認をされたりしていますか? 松崎(髙松建設) チェック・確認としてのフロントローディングは、仮設検討チームが設計の初期段階で敷地と工法の関係を検討しています。図面の不整合については、連携・施工図チームがモデル・図面を作成するときに「不整合があるので納まってません」と書き込みます。設計・現場の人はそこを見て確認していく。3Dだと誰でもわかり易いというメリットがありますね。 志茂(グラフィソフトジャパン) いわゆるBIMチームがチェック機能を備えたものなのですね。 松崎(髙松建設) 現在、建物が複雑化していく中、3Dで検討しないと分からない事例は増加傾向にあります。我々は手書きが主流の時代から作図を行っていますが、3次元の形を2D図面からイメージするのは何十年もの訓練が必要です。2Dの躯体図にしても建築を知らない人から見れば分からない。しかし、3Dの図面だと建築に詳しくない人から見てもとても分かりやすいのです。熟練工が今後減少傾向にある中、今後のツールとしてはとても良いと思います。しかし、3Dモデルはメリットもあるけれど情報が連携されているが故に修正に時間がかかるなどのデメリットもある。費用などのバランスも見ながら上手くツールを使って時短に繋がっていくと良いと思います。 志茂(グラフィソフトジャパン) 今の事例のような提案から作業所の所長さんがBIMファンになったりすることもありますか? 松崎(髙松建設) 最初「この現場でBIMを使用します」と言うと困惑する所長もいますが、1、2回使ってみると「BIMでやってほしい」と言われることが増えてきています。   髙松建設のBIM教育マニュアルについて 松崎(髙松建設) 新入社員研修では、設計部門に関してはBIM教育のカリキュラムがあります。工事部に関しては今年から入社3年目4年目のタイミングで実験的に始まった段階になります。 徐(髙松建設) 設計の新入社員研修では基本的に Archicad Magic と社内マニュアルも併用で基本操作まで覚えてもらいます。上級者になってくるとBIMチームを対象にスキルアップを図るため、 BIM Classes に参加してモデリングのコツや今まで使用していないような機能を習得しています。 […]

松江土建株式会社 × 有限会社落合建具製作所<p class='matsuedoken-ochiaitategu-2024 case-studies-caption'></p>

松江土建株式会社 × 有限会社落合建具製作所

BIM技術外部パートナー 山陰地方にある島根県は、全国で2番目に人口が少ない地。建築業界者も限られたこのエリアで、積極的にBIMの導入を進めているメンバーがいる。地域密着型の総合建設業である松江土建と、明治10(1877)年から続く老舗、落合建具製作所だ。松江土建建築部営繕・積算課設計担当主任の佐藤さんは、島根県に拠点を置くグラフィソフト認定のArchicad ユーザーグループ「山陰Archicadフォーラム」の運営スタッフでもある。 「より質の高いパースを作りたいと考えてArchicadを導入しました。当時、会社としても初めてのBIMの取り組みでしたが、ユーザー会の仲間と一緒に勉強することができたので、とても心強かったです」 基礎的な知識を修得した佐藤さんは昨年、Graphisoft認定Archicad BIM Manager の資格を取得した。 「BIMを複数人で使うためにはルールが必要なことを感じていました。講座では、誰がいつ見てもわかるデータにするためには何をするべきか、そのノウハウを学びました。入力する人、そのデータをチェックする人、指示を出す人、そういう役割づくりや、目的を設定する必要性があることも理解できました」 BIMプロジェクトメンバーに任命されたのが、現場の仮設事務所にデスクを構えるIT・技術部IT推進課主任中島さんと、現場サポートとしてArchicad上で入力や干渉チェック、数量算出などを行う建築部工事課佐川さんだ。 「まずはBIMで何をどこまで作るのか、各現場で目標を決めるのが目下の課題です」 ボーダーレスなBIMだからアイデアを形にできる。建具・家具づくりに応用した落合さんの取り組み 松江土建の古くからのパートナーである落合建具製作所の代表・落合稔さんがArchicadを使い始めたのは、還暦間近の59歳。今では建具屋の枠を超えて、施工図まで描く。 「きっかけはコロナ禍。自粛期間中に、大きな住宅改装の製作家具・建具を受注したのですが、お施主さんが妊娠中だったんです。遠隔で話すことしかできず、どうやって表現したら伝わるのだろうと悩んだ時に、これだ!と」 この頃すでに、高校の後輩に勧められてArchicadを購入していた落合さん。3Dで図面を“見える化”することで、施主とデータ上で話を進めることができた。 「お客さんは専門的な話をしても当然わからないので、イメージが共有できることはとても大事。そのスムーズさ、ラクさを覚えて、BIMの世界にどんどんハマっていきました」 最初はわからないことだらけだった落合さん。佐藤さんも所属するユーザー会で積極的に教わった。「使い慣れた2DCADに戻りたくなるけど、そうすると成長しないので思い切って2DCAD断ちした」のが功を奏したという落合さん。落合さんに、BIMを使うメリットを尋ねてみた。 [メリット❶] 製造工程の前倒し=「フロントローディング」ができる 上流で構想している段階から、設計士と一緒に具体的なところまでビジュアル化して考えることができるので、建具職人の技術が活きた設計になる。その結果、製造途中の修正回数が減り、完成までのスピードがものすごく早くなった。 [メリット❷] 修正作業がラク BIMは平面図・立面図・3Dと全てにリンクしているので、修正が入ったとしても、平面図・立面図・3Dそれぞれに修正を加えずに、一度で一気に修正ができる。これまでは2-3日かかっていた作業が1時間程度で完了することも。 [メリット❸] 全国に仲間が増えた ユーザー会に参加することで、名古屋在住のパートナーを見つけたという落合さん。離れていても、Archicad レギュラー版が備えている共有プロジェクト機能「チームワーク」を使えば、BIMcloud上で繋がることができる。ユーザーフェストという年に1回開催されるユーザー同士のフェスで新たな仲間が見つかることも。 [メリット❹] 無理難題なリクエストにも応えられる 無理難題なリクエスト建具・家具の施工図のために始めたBIMだったが、やっているうちに閃いて、こうしたらもっとリアリティが出るんじゃないかとか、もしかしたらこれもできるんじゃないかなど、突き詰めていった落合さん。Archicadを応用して新たな領域にもチャレンジした結果、大量生産や複雑な案件にも対応できるようになった。 複合施設「さんびる文化センター プラバホール」 松江市にあるさんびる文化センターのリニューアルの際は、複合棚やマガジンラックについて、監理者とBIMxで修正箇所の情報をやりとりした。 泊まれるジオパーク拠点施設「Entô」 島根県・隠岐諸島にある、ユネスコジオパーク認定の風光明媚な島の港に建つ島内唯一のホテル。このホテルの木製建具を手掛けた。 仲間がいてこそ発揮されるBIMが持つ無限の可能性 落合さんと佐藤さんはユーザー会で出会い、2022年から仕事のパートナーでもある。 「これまでは社内だけでBIMを使っていたのですが、2022年頃からBIMcloudを使って外部のパートナーさんたちとBIM上でデータをやりとりするようになりました」と佐藤さん。例えば、佐藤さんが施主と打ち合わせをした内容をArchicadを使って入力すると、落合さんがそこに入っている家具の概略モデルをBIMcloud上で詳細に作りかえる、という流れ。データはアイスバーグ方式で、「工作室」という名前を付けて共有で保管する。 「今日はこの家具を作ったよ、と落合さんから連絡が入ると、チームワークのデータを見に行くんです。すると、私がArchicadで入力した四角い家具に棚までできていて。お互いに少しずつ詳細を詰めていきながら、BIMcloud上で家具を含めた建物がどんどん完成していく様子を見るのは感動的です!」 3Dで想いを伝え確認し合えるのは、効率的でもあった。佐藤さんは、社内のBIM活用を推進するために、BIMを使った事例を社内報で報告する。さらに効率よくBIMを活用できるように、外部から技術パートナーにも協力してもらっている。 「BIMは目的を持って使ってこそ力を発揮する道具です。データはいくらでも入るので、関係のないデータを入れても仕事量が増えるだけ。今はまだ、BIMを使うメリットやOPENにする意義などを社内報で啓蒙している段階。施工段階での使用は3Dモデルをベースに、必要なところで図面に切り出して、現場が情報を加えて業者にアウトプットしていく程度ですが、作図の作業量が減ったので、それだけでも現場の手間が減り、生産向上につながりました」 ただ今、少しずつ社内ユーザーを増やしながら、仲間と共に、施工BIMでどこまでできるか挑戦中だ。

大末建設株式会社

大末建設株式会社

大末建設は、2037年の創業100年に向けて会社全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)に奮闘している。『2030年ビジョン』のもと、新中長期経営計画「Road to 100th anniversary ~飛躍への挑戦~」をスタートさせ、その取り組みの一つとして、DXを通じた生産性向上への動きを本格化させている。では、建築におけるDXではどのように課題解決に向けた取り組みをしているのだろうか。Solibriの導入からわずか1年ですでに導入効果が得られた同社に、具体的な業務フローやこれからの展望などについて詳しくインタビューした。

株式会社竹中工務店

株式会社竹中工務店

ポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)は、愛知県名古屋市にあるセミナー・講演会・コンサートなどが行われる展示会場だ。竹中工務店では、名古屋市とのPFI事業(民間資金を活用した社会資本整備)で、名古屋市国際展示場第1展示館整備事業を受託した。第1展示館は、南北210m、東西96mの箱型形状で、天井高20mの視野が開ける無柱空間が特徴である。その大規模プロジェクトの全貌をはじめ、どのようにBIMが関わってきたのか、また今後の同社の展望について詳しくインタビューした。

馬淵建設株式会社<p class='mzec-2024 case-studies-caption'></p>

馬淵建設株式会社

今も受け継がれる、創業者・馬淵曜氏の言葉。若手社員2人が提案した、その頃はまだどんな可能性を秘めているのかわからなかったBIM の導入を決めたのも、社員の根底にそのスピリッツが宿っていたからなのかもしれない。発起人は、現在工務設備部の山田修作さんと設計室課長の秋元清太郎さんだった。それぞれの立場からBIM の必要性を感じ、上司の高橋孝匡さんと鈴木禎二郎さんに直談判した。 「なんとなくこのツールが、いずれ自分たちを助けてくれそうだな、という感覚がありました。習得するのはすごく大変そうだけど、その先にはやっていなかったら成し得なかったものができそうだと期待を持てたのです」当時を振り返りながら語る、秋元さん。 「発起人の2人がやりたいという思いを一番大切にしたかった」と、上司の高橋さん。最初は周りの関心は薄かったという。高橋さん、鈴木さん、山田さん、秋元さんの4人は揃って、建築・建設業界の最新製品が出展されるBIM の展示会や講習会に出向き、知識を深めていきながら、会社として何ができるかを模索・検証した。そうした地道な活動の積み重ねと社会の流れも相まって、2016年、BIM を取り入れることが決まった。Archicad を導入したのは2018年のことだ。 設計と施工の2本立てで、やれることから取り組んでいく。 BIM は設計から施工まで一貫した取り組みができると聞いてはいたが、実際にできるようになるまでには時間がかかりそうだった。そこで設計も施工も、まずは「できることからやってみる」を合言葉に、設計は計画図やパースなどのプレゼン資料作成、施工は仮設計画や施工検討から使い始めた。社内の発展を見据えて、部署の垣根を超えて取り組むことを心がけた。2020年6月からは、外部講師を呼んでのトレーニングを試みた。設計図の図面化を目的に、過去に施工した物件を題材にして操作方法を学ぶ。設計室の秋元さんは、梁とか壁を入力してモデルは作れたけれど、その3D モデルを図面に書き出すことができなかった。 「ボタンひとつで出てくるものかと思っていたけど、いろいろな表現の仕方がある。最初はその設定がわからなかった」外部講師によるトレーニング終了後も、秋元さんが主体となって、選出されたワーキンググループメンバーで社内トレーニングを続けた。週に1回、2~3時間程度で、参加者は10人くらい、部署はばらばらだ。毎回課題を設定して取り組んだトレーニングは、それぞれの業務にBIM が浸透してきた頃には、業務内容を共有する場に変わっていった。 「現場で、この場合とあの場合とでは?と実際に試してみることはできないので、そういうときにBIM を使えば、どっちがコスト的に安いか、工期的に合理的かという検証はしやすくなる。これまでは、大きな損失がなく工期の中で終われば、現場のことは現場の技術者任せで、それがベストかどうかの検証はやってなかったんです。でもBIM を使えば、条件が限りなくベストに近い状態まで整えたものを現場に引き継ぐことができるようになります。現場に限らず、事業主や協力会社に対しても、われわれがどういうふうに考えているのかを具体的に伝えるには、BIM を使うのが一番効果的な方法だと感じています」あらゆる場面で使い勝手が良いものにするには正確性が求められるので「BIM モデル作成の川上となる立場の設計者として、日々の知識習得は怠れないです」と秋元さんは言う。 [設計室の取り組み] 意匠・構造モデルを一つのファイルで作るメリットの検討。 BIM 導入初期から、秋元さんたちはBIM の価値を高めるために、社内の技術発表会でBIM の成果物を発表していた。最初は「要するにプレゼンツールでしょ?」という印象を持たれていたが、秋元さんたちのBIM 技術が高まるにつれて、発表内容も高度になり、図面も書けるし数量も算出できることが次第に認知されていった。現在設計業務において、モデルを作って図面を描き出し、成果品として設計図を作るという作業がメインだ。今まで記号だけで表記していた構造スリットをモデルとして入力しておくと、積算段階で数量まで算出できる。発表ではそういうメリットをフローにして伝えた。 [積算課の取り組み] 地面から下の無駄をなくすための活用。 Archicad を導入して最初の利用は、積算との連携だった。馬淵建設では崖や傾斜地での建設案件が多く、地面から下をどのように施工するかによって工事費が大きく変わる。積算では掘削土量と盛土量を算出する。何度も土を出し入れするとコストが非常にかかる。出す量と入れる量をいかに精度良く差を少なくするかが肝。Archicad ではソリッド編集という機能が土量算出において便利なツールだ。株式会社バル・システムのBIM 対応の建築数量積算システム「ヘリオス」を使って、躯体モデルを作ったデータをArchicad に取り込み、そこに敷地と仮設を付けて簡略的な仮設計画を作る。すると、これまで一人で複数の図面を描いていた最初の作業を一気になくすことができた。 BIM マネージャーが中心となってBIM という広い世界を発展的に使っていく。 現在は委員会組織でBIM の推進活動を行っており、本業との兼務でBIM 業務に専念しづらい状況であるため、馬淵建設では今後、組織としてチーム編成をしていく方針。昨年夏、秋元さんと建築CSサポート室の栗原さん、設計室意匠課の山口哲也さんの3人は、グラフィソフトが主催するBIM マネージャートレーニングプログラムを受講し、Graphisoft 認定 Archicad BIM Manager の資格を取得した。プログラムは10週間1セットで、週に1回3時間ずつの講義のほか、ワークショップもある。秋元さんはプログラムを受講して、「BIM の世界の広さを知りました。BIM = 情報なので、その膨大な情報をモデルにどれだけ入れるのかを決めることが大事。全ての情報を入れなくてもできるけれど、情報を入れるほど精度の高いものができる。いろいろな角度から見ることもできる。自分たちが今までやってきたことはほんの一部でしかなかったんだなって」と語る。 BIM の使い方は無限にあるので、それぞれ個々のやり方をしてしまうと、学んだり教えたりする手間がかかるし、教えられた人も他のやり方を知ると混乱する原因になる。栗原さんは、「教えたり、使いたいツールを探したりするのにも時間がかかるので、その手間暇を削減するために、ルールやテンプレートを作る必要性を感じました」と話す。現在栗原さんと山口さんが中心になって作成しているテンプレートは、最初のとっかかりだけで60P。この後およそ1年かけて完成を目指すという。「でもきっと、完成はなくて、ソフトの進化と環境の変化に合わせて、どんどんアップデートしていくことになると思います」。今後は、例えば本社サイドで計画立案したものを現場に渡してBIM マネージャーがオペレーションしていき、現場はそれを具現化する。そういうふうにBIM マネージャーや推進メンバーが核となってより効果的なBIM の取り組みを進めていくことを目指す。さらに、協力会社とも、先を見据えて発展していけるような形でBIM を使っていきたい。10年後20年後を見据えた馬淵建設の挑戦は続く。

小川工業株式会社 × 株式会社アルク設計事務所<p class='ogawak-ark-2023 case-studies-caption'></p>

小川工業株式会社 × 株式会社アルク設計事務所

初めて顔を合わせた設計会社と施工会社が協働し、複雑な公共事業でBIMを有効活用した事例がある。公共事業における業者選定の流れは、一般的に①基本設計②実施設計③施工となる。通常、①と③の間には、1年以上の時間差が発生する為、設計・施工の各モデルを同時並行的に作れるというBIMの特性をなかなか活かしきれないというのが実情だ。 埼玉県にあるアルク設計事務所と小川工業は、2023年春に竣工した公共事業で設計担当と施工担当の関係にあった。その両社が、公共事業におけるBIM活用の可能性を模索するため、会社や立場の違いを超えて互いに手を取った。一致していたのは「現場でいかにBIMを活用できるか、それが会社の未来を決める」という、使命感にも近い担当者の思いだ。「正直、BIMを使わなくてもプロジェクトは実行できたので、思い切った決断でした。県の担当者が、私たちの未来に向けたチャレンジを受け入れてくれたおかげです」そう話すのは、今回の設計を担当したアルク設計事務所の今西淳夫さん。建物を作る関係者が一堂に集まったとき、今西さんがBIMモデリングの有志を募り、手を挙げたのが施工担当の小川工業、空調換気担当の大宮管工、電気担当の丸電の3社だった。 社内でB I M を浸透させるためにマネージャーの育成と組織を配置 「私たちはBIMを使い始めたばかりでほとんど手探りでしたけれど、“価値のある挑戦”だということは直感でわかりました」そう当時を振り返るのは、小川工業でBIM室長を務める平塚健太郎さん。2020年から、積算課長(現工務部副部長)の白石佳久さんと共に、社内のBIM導入を推進してきた。「Archicadを選んだのは、多彩な機能を持つアドオンソフト『BIforArchicad』を使ってみたかったから。従来のマンパワーに頼る積算と異なり、3Dモデルから自動で見積数量を拾える機能や、各種施工図の自動作成など、確実な生産性向上につながるという期待がありました。これらのソフトを使用し、スピーディーに様々な事前検討を行うことで、現場での手戻りや材料のロスを減らすことが可能となる。これからの建築業界にとって、BIMの導入は必要不可欠になるでしょう」と語る、白石さん。社内にBIMを浸透させるために、技術士(建設部門)のライセンスを持つ平塚さんと二人三脚で、独立した部門を目指すことからスタートした。平塚さんは今年、グラフィソフトが主催するBIMマネージャープログラムを受講し、buildingSMARTのプロフェッショナル認証も取得している。「BIMでやれることは無限大。自由なフィールドだからこそ、大切なのはルール作りだと思っています。今回の公共事業のように、協力業者が増えれば増えるほどルールの決め方も複雑になり、杓子定規に進められるものではありません。だからこそ適切なルールを設定し、一つのモデルをベースにすることができれば、それぞれの視点からいろいろなことをみんなで検討することができる。そういう意味で、BIMを管理するBIMマネージャーは、今後ますます重要な役割を担っていくでしょう。海外ではCMやPM以上に、BIMマネージャーが権限を持つ場合もあるのだとか。日本は空気を読むというか、お互いに調整し合える文化があるからうまくいっていた部分もありますが、多様な働き方が求められるこれからの時代、そのような肌感覚に頼らずプロジェクトを効率的に進めるには、BIMマネージャーがキーマンになると考えています」 小川工業の社内BIM導入計画の一部 公共事業で設計から施工までトライアルで見えてきたこと 公共事業でのBIM活用例 ①フロントローディング 「複雑なプロジェクトを円滑に進めるためには、プロジェクト全体を通して、関係者全員の“状況理解”“共通認識”“課題抽出”が非常に重要になると考えました。そこでBIMモデルを使って、それぞれのテリトリーをまたぐところを積極的に分析・提示し、可能なことは事前に課題をクリアしていくようにしました。大型モニターを使って、問題になりそうな状況を関係者に示せたことが、共通理解を得るのにひと役買いました」 公共事業でのBIM活用例 ②ビジュアライゼーション 「3Dのプレゼンは、2Dよりも理解し次の行動につながる瞬発力が全く違いました。共有できる情報が増えるので、見る人との議論も深まります。現場はそれぞれの道のプロなので、いい意味でも悪い意味でも自分なりの順番通りに物事を考えがち。でも課題や手順とかは現場ごとに異なるから、監理者は“ここの現場はそうじゃないよ”って言ってあげないといけない。そのために3Dはとても役立ちました。近い将来、現場の職人さんたちにQRコードとかを配って、ピッと飛んだら10分の1の縮図が出てきて“今日はこの辺の工事に入るな”なんて携帯で確認できたら……理想ですね」 公共事業でのBIM活用例 ③干渉チェック BIM活用が真に求められる時代の到来中小企業は自発的にBIMを使って生き抜く 今回のプロジェクトは、現場をコントロールする監督が9人(9社)に分かれるという複雑な状況だったこともあり、BIM共通モデルを使うことで、作業がよりスピーディーに、そして予算をかけずにできたという成果が出た。「私たち小規模設計事務所が、都度施工体制が変わりうる公共事業のような契約条件下で、BIMを導入してモデルを構築したときに、どのような課題、効果が得られるかという実験的試行ができました。国はBIMを推しているけれども、その取り組みが中小企業まで降りてくるのを待っていたら、日本の体質下では取り残されるだけ。マンパワーで進められる大手ゼネコンと並んで大型物件へエントリーするためは、私たちは常に挑戦し続けることが必要なんです。今後は、BIMに関する中小企業間の交流も積極的に広げていきたい」と、意気込む今西さん。アルク設計と小川工業の次なる挑戦は、設計から施工までの一貫したモデルを構築すること。そして、BIMモデルを活用して、お客さまに新しい価値を付加した建築物を提供することだ。

佐伯綜合建設株式会社

佐伯綜合建設株式会社

創業1953(昭和28)年、佐伯綜合建設株式会社は、岐阜県にて民間の工場・事務所の建設工事をメインに行う地場ゼネコンである。佐伯鐵巧株式会社を傘下に持ち、グループ会社の連携によって質の良い建物をスピーディに提供できることが強みだ。時代の変化をチャンスと捉え、最先端のテクノロジーに果敢にチャレンジしている。同社のBIM推進の取り組みやISO19650の認証取得について詳しく話を伺った。

株式会社都市建築設計

株式会社都市建築設計

創業1978(昭和53)年、株式会社都市建築設計は沖縄県那覇市に本社を構える組織系設計事務所だ。設計を通じて、安心で安全、人、環境に優しい街づくりに貢献している。沖縄県において公共施設の設計監理をメインに、医療福祉施設、複合施設、マンションなどの設計監理を遂行するほか、設計に加え従業員の働き方においてもSDGsに準じて事業を推進中だ。時代に真っ先に適応し、さまざまな取り組みを加速させるべく日々奮闘する同社が、どのようにBIMを学び、浸透させ、さらに、これから広めていくのかをインタビューした。

古郡建設株式会社

地元に根ざした総合建設会社。主な仕事は、埼玉の県北を中心とした病院、福祉施設、工場、倉庫、事務所などの幅広い建築工事、道路の舗装や河川の護岸といった土木工事、またグループ会社では住宅建築も手がけるなど、地域のあらゆる発展を担っている。2021年から「健康経営優良法人認定」(中小規模部門)を取得。社員の健康管理だけではなく、地域・社会に対するSDGsな取り組みにも力を入れている。

石井工業株式会社

石井工業株式会社

石井工業株式会社は、1904(明治37)年に創業した100年企業である。千葉県香取市に本社を構える地場ゼネコンとして、総合建築業を通じて社会貢献を担ってきた。特に千葉・茨城においては、物流倉庫、冷凍冷蔵倉庫、各種工場の建築実績のほか、公共工事などの社会基盤の整備など、多数の実績を誇る。このような伝統企業が、現在どのようにBIMを活用し、さらに、これからの建設業にどのように寄与していくのか、代表取締役の石井良典氏と、実務を担当する営業部主任の北田望美氏に詳しく伺った。