
前田健太郎建築設計事務所
所在地:東京都目黒区
代表者:前田 健太郎
創 業:2011年
業務内容:
- 建築、インテリア、ランドスケープおよび会場構成の企画、調査、研究、設計及び監理等
前田健太郎建築設計事務所は、東京と新潟に拠点を持つアトリエ設計事務所。戸建て住宅やリノベーション、インテリアのデザインをはじめ、学校や駅舎、官公庁の関連施設など公共建築の設計も幅広く手掛けている。
代表の前田健太郎氏は、アメリカで生まれ、武蔵野美術大学を卒業。その後、伊東豊雄建築設計事務所で、有名建築の設計業務に多数携わり、2011年に事務所を設立した経歴を持つ。
もともとヒップホップ文化や彫刻などに造詣を持つ芸術肌である一方、事務所で手掛ける事業を“アクティブワーク”と“パッシブワーク”というコンセプトに分け、ロジカルな視点で経営する面も併せ持つ。着実に事業を拡大させ、現在は約15名の所員を抱えている。
その同社が設計のメインとして活用するツールが、Graphisoftの「Archicad」である。同ソフトを導入してから約10年。今回、代表の前田健太郎氏と、板野はづ紀氏に事務所の概要や、Archicadを活用するメリットなどをお伺いした。
有名プロジェクトでの実績とArchicadとの出会い
前田健太郎建築設計事務所は、民間や官公庁の幅広い設計案件に対応し、多くの実績を重ねているアトリエ設計事務所である。
代表の前田健太郎氏は、武蔵野美術大学の在学中に、自身が生まれた国であるアメリカに渡り、設計事務所でのインターンを経験。その時の上司の薦めもあり、伊東豊雄建築設計事務所に入社し、「座・高円寺」や「台中オペラハウス」、台湾・高雄市の「ワールドゲームズメインスタジアム」など、数々の有名建築プロジェクトに携わってきた。
「入社した当時、ちょうど福岡の”ぐりんぐりん”という公園施設の設計プロジェクトの真っただ中でした。複雑に見えて構造は合理的な伊東さんの設計に魅せられ、その流れで3Dを用いた建築設計の世界に入っていきました」と前田氏。この時期によく使用したのはRhinocerosだったという。「Arupと組んだ台湾のスタジアムやオペラハウスの案件では、複雑な形状をリアライズするために尽力しました。当時は3D系のソフトの情報が、まだ英語ばかりだったこともあり、自分で調べながら手探りでしたね。構造的な問題に直面することもあり大変でしたが、楽しい経験でした」と、デジタルを駆使した最初のエピソードを前田氏は振り返る。
こうした難易度の高いプロジェクトでの経験を経て、2008年に独立し、2011年に設計事務所を立ち上げた。当初は並行して、中央工学校で講師を務めていた前田氏。最初、生徒たちは手書きと2DCADが設計の授業でメインだったが、その後、学校側が授業にArchicadを導入しBIMの実力を目の当たりにしたという。「もともとアメリカの友人から、BIMの情報については聞いていましたが、Archicadを学校が導入したことで、生徒から出てくる図面やパースのクオリティが一気に上がったのです。従来は平面図、断面図、パースと別々に作っていたものがすべて繋がり、学生のボトムが一段上がった感覚でした」と前田氏。
それまでは、クリエイティブな思考をする際に、デザインや思考がツールに縛られてしまうことを危惧していたが、教える側の視点から実際にArchicadの効果を見て、可能性を感じたという。「当社には、いわゆる建築学科の卒業者のほかに、インテリアなど他分野が専門の若い人も入社します。そのため、短時間で実務を覚え、早い段階で寄与してもらうためにIT補助金も活用してArchicadを2014年頃に導入しました」と前田氏は導入の経緯を語る。

松原の家(内観)
2つのコンセプトに基づいて案件を手掛けることの効果
前述のとおり、前田氏の事務所は民間や官庁の案件を問わず、手掛ける設計案件の幅が広い。前田氏は、「“パッシブワーク”と“アクティブワーク”というコンセプトで捉えることにより、バランス良く経営を行ってます」と事務所の特長を説明する。
パッシブワークとは、すでに発注者側の固まっている要望に対して行う仕事で、環境保全施設や学校の増築など、公共建築の設計案件をメインに指す。一方のアクティブワークは、いわゆるアトリエ系として、施主からの相談に対してデザインやコンサル的な提案を積極的行っていくものになる。
「パッシブワークと言える代表的なものですと、例えば3,000平米ほどの学校の増築や、交通機関の駅舎の建替え、環境保全施設設備改修などがあります。入札案件などを質の高い仕事で対応し、次の仕事に繋げるという流れです」。
その上で、アクティブワークとして、被災地支援や、地方の活性化事業などを手掛け、サスティナブルで社会貢献的な仕事を行っていると前田氏は語る。

アカマツ保全林地のエントランス
また、公共事業をアトリエ設計事務所が受注するメリットは3つあると前田氏は分析する。
「1つは資金的な理由です。パッシブワークはロードマップが描けているため、資金計画が立てやすいのですが、アクティブワークは企画段階から手掛けることが多いため、クリエイティブではあるが延期や中止のリスクが大きい。2つ目は、事務所として着実に実績を積めるということ。3つ目は社員教育のためです」。このように前田氏は戦略的に公共案件を取り入れていることがわかる。「デザイン検討に時間のかかる民間の足の長い案件と異なり、公共事業は工期が定められており、担当社員はスケジュールを自分で考えて現場に関わる必要があります。
また、設計で基礎的に必要な知識を現場などの実体験でこそ得られるスキルが経験できるのも会社として価値があります」と前田氏。建築設計は地道な一般社会に根差しながら夢を描く、という考えが根本にある。現在、パッシブワークとアクティブワークは半々くらいの割合で、バランス良く対応することで経営的にも育成の面でも効果的だと語る。

大崎の家(外観)

大崎の家(内観)
Archicadを用いることのメリットや経営的な重要性
このようなコンセプトに基づき、さまざまなプロジェクトが進行しているが、そこに貢献しているのがArchicadである。前田氏は「高級住宅の実施設計では、Archicadを用いて半年で150枚の図面を1人のスタッフで仕上げられました。
BIMソフトによってCADでは不可能だったことが一人で何役も行うことが可能です。平面担当、立面担当と役割がわかれていると認識のズレも起こりやすかったのですが、1人で完結できると連携不足での手戻りもなくなります」とArchicadの効果を語る。設計の細分化が進む中、生産性を向上することで一連のフローを経験できる点も大きいという。
設計担当の板野氏もArchicadの効果を実感するスタッフの一人だ。「私が担当するのは、都立公園の隣地に住宅を建てる設計プロジェクトで、住宅を三方から見渡せる特殊な場所です。
そのため、企画案をいくつも施主に提案しました。模型やパースでは伝わらないことも多く、Archicadの3Dモデルを利用しVRで説明すると反応が違ったのが印象的です。キッチンのサイズや家の日差しの具合など一目瞭然で、イメージの共有が容易になりました」と板野氏。設計でもArchicadでは3Dモデルを作ったあとに図面を提示してくれるため、CADと異なり空間的な理解がしやすいのも特長だという。

湯島のリノベーション(内観)
また、「工務店向けの図面と、施主へのプレゼン用図面は、別々に用意する必要がありますが、Archicadは1つのBIMデータから各図面を書き出していくため、それぞれの資料作成がスムーズです。もう以前使用していたソフトにはもう戻れないと思いますね」。
前田氏は「BIMはコミュニケーションをはじめ、パースの作成など1日で20パターンなど模型では不可能な試行を何回もできることが良いですね。シミュレーションもしやすく、環境デザインにも効果的です」と評価する。今後は、さまざまなテクノロジーを使いながらジャンルの横断を試みたいと展開を語る。
また、前田氏はAIの活用にも積極的だ。「オフィスレイアウトなどをAIで検討しています。Archicadで作成した静止画と、インテリアや素材イメージをAIに学習させ、レンダリングして出力します。現在は当社の引越案件などテスト的に使用していますが、今後はBIMとAIにより企画出しの部分は変わっていくかもしれません」と分析する。
そして、「大事なことは、生身の人間が感じ、より良いものを考えることです。手書きの時代をうちわ、CADを扇風機だとすると、BIMはエアコンのようなものです。TPOに応じて使いわけは必要ですが、まず持っているかどうかが大切です。一人の経営者としてもArchicadを持つことは非常に重要だと思います」。
Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください
ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー

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- 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
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